動物病院での人材育成-対人関係の悩み

動物病院でキャリア支援をする中で、対人関係の悩みは比較的多い相談です。個人から相談を受けることもありますが、人事担当や管理職の方から受ける相談は、単に従業員の技術が上がらない相談というのはほとんどありません。

EAPの分野においては、管理職や主任の方が問題があると感じている従業員への関わり方や職場の改善に関しても援助を行います。その方法の一つが、ミディエーションという方法です。

「ミディエーション」とは、当事者双方が話し合って解決案を創出する話し合いのプロセスをさします。コンフリクト（対立）解決法の一つで、第三者の支援のもと、対話を行い、双方が納得できるウィン・ウィンの解決を目指すものです。

主に60年代後半からアメリカで、裁判・訴訟に代わる第三者介入手段（ADR：Alternative Dispute Resolution)として普及し、全世界に広がっています。欧米ではリーダーシップの範囲として、アメリカでは子どものうちから学びます。

私は、この「ミディエーション」という考え方を、EAPの中で初めて知りました。
今までは、組織における対人関係の悩みなどは、キャリアコンサルタントとしての自身のスキルや経験により支援をしてきていましたが、組織支援において、系統的な学びは興味深いものでした。

組織の中での人間関係がもたらすチームワークへの影響はどのようなものでしょうか？動物病院において、より良い医療を提供するためには、院内のチームワークは欠かせないものであり、コミュニケーションはとても大切なものです。

組織内での人間関係の対立の問題は、さまざまな問題を引き起こしていきます。

• 無駄な時間、労働時間の損失
• 粗悪な意思決定
• 離職
• 不要な組織変更
• 意欲低下

少し考えてみただけでも、人間関係の問題はできるなら、修復した方が良さそうにみえます。修復した方が良いと分かっていても、実際に修復しようとすると、膨大なエネルギーや時間を使うため、躊躇するのものです。そんな時には、修復すべきか否か、組織内で起こっている人間関係に関してかかるコストを算出してみてはどうでしょうか？

人間関係に問題がある場合においても、コストとして算出すると問題の大きさが見えてくるのではないでしょうか？
動物病院において人材の確保は大きな課題ですが、採用が困難になってきている現在において「離職」ということは、組織にとっても大きな損失です。採用までにかかった広告費や、就活イベントへの参加費、そして育成に欠けた人材費や時間もコスト単価に含めて算出します。

人間関係の対立における問題は、一人ひとりの価値観の違いや感情によるものが多くをしめます。
ただ、解決する側としては、感情に左右されずに、職場の問題として整理を行い、書き出すことから始めてください。その上で、時間とエネルギーをかけて解決するかどうか、職場の生産性という視点いおいて取り組むべきなのか否かを判断してほしいと思います。

職場の人間関係について、今回はコスト計算という考え方をご紹介してみました。
「ミディエーション」においては、対立のある双方の調停や仲裁として、建設的直面化（問題点を事実として示す）、課題を直視して解決しようというやり方になるのですが、これには仲裁役のスキルも求められますし、また何より時間を要します。直接仲裁を行うのは、そういう意味では、最終手段と言ってもいいでしょう。

直接仲裁する以外に、根回しや、強権（上司が、いい加減いざこざやめなさい！という）という方法もあります。
日本においては、文化的に議論しあうという方法はとられていないことが多いのではないかと思いますが、根回しや強権という方法で解決しない場合には、ミディエーションという手法をつかい、問題解決していくのはどうでしょうか？