新年度スタート! 動物病院での新人研修と愛玩動物看護師の業務
2023/04/02
いよいよ、4月から新年度がスタートしますね。愛玩動物看護師の有資格者が出てくる初めての年になります。コロナ禍でのルールも変化し、時代の変化が変化が目紛しい中、新人教育も含めてどのように人材育成を行なっていくべきでしょうか?
新入社員研修の主な目的は、つい先日まで学生だった新入社員に対し、社会人としての自覚や心構え、知識などを教えることだと言われています。また企業理念を伝える、ビジネスマナーや業務上必要な知識などを習得する目的もあります。動物病院にとっては、将来有望な人材に育ってもらうための重要な研修の1つではないでしょうか?
動物病院における新人研修
Training for new employees
企業における新人研修と動物病院における新人研修はどのように違うのでしょうか?
一つは、忙しい繁忙期に新人が入ってくるという点です。新人が新しい環境に慣れ、いろいろなことを学ぶ時期と、動物病院における繁忙期は重なっており、一番忙しい時期に新人教育が重なるという、大変過酷な状況です。
それでも、最近では新人教育の必要性を感じて、新人研修を導入されている動物病院が多いと思います。
それは、どの動物病院でにおいても、新人育成における課題を問題視しているからではないでしょうか?
新人育成における課題
世代・価値観の違い
経営者の方や管理職の方が感じている課題としては、大きく2つ、今までと同じ教育体制では人が育たない、メンタル不調に陥りやすいということがあるのではないかと思います。デジタルネイティブと言われる世代、そしてコロナ禍で貴重な学生時代を送った世代では、オンラインでの授業や社会的自粛により対話能力が低下していると言われています。また敬語を使うという環境が少ないため、仕事場で友達と話している言葉を使うこともあるのではないでしょうか?
私自身、新人の頃、勤めていた病院において患者さんと話すときは”恩師”に話すように話すということを教えられましたが、先日新人の獣医師に話を聞くと、恩師とも友達のような感覚で話しているとのこと。世代の違いを実感しながら、これでは、”恩師”に話すようにという説明では伝わらないということを実感しました。
また、キャリア支援をする中で、若手のスタッフに、その病院を選んだ理由を聞くと、”人間関係・病院の雰囲気がいい”からという理由が、圧倒的に多数を占めます。そのような環境だと、自分が相談できる、成長できると考えているとのことです。
新人教育における環境
相談できる環境
入社まもない時期は、新入社員は、自分が成長できる環境に飛び込んだことに期待と不安を覚えるものです。”人間関係・雰囲気がいい”ということを理由にあげているということは、自分にとって居心地の良い環境と取られていることもあります。居心地の良い環境とは、優しく丁寧に教えてもらえる、気にかけてもらえる、否定されない、叱れないということかもしれません。
また、”人間関係が良い”ということを理由にしている場合は、自身のコミュニケーション能力に不安を感じていることがあり、積極的に質問したり相談できないということもあります。
自身は成長をしたいと感じていても、わからないことを忙しい先輩に聞いていいいのか、忙しい先輩の仕事の邪魔になるのではないか、こんなことを聞いたら何て思われるんだろうと、不安要素を多く抱えている場合もあります。
そのようなことを考えると、早い段階で新人同士と管理職も含めたスタッフがコミュニケーションを取れる場を設ける、相談しやすい環境を作るということがとても重要と考えます。そうすることで、その後に行われる院内研修においても、相談しやすくなるのではないでしょうか?
そして、新人の方には言葉で、”わからないことは、聞く”ということを繰り返しお伝えすることです。
愛玩動物看護師の育成
Training for Veterinary nurses for companion animals
今年は新人研修と合わせて、愛玩動物看護師の教育に取り組まれる動物病院も多いとおもいます。国家資格取得後に、どのようなことができるようになるのか、どのように国家資格を活かしていけるのか、愛玩動物看護師の方も考えていると思います。
資格取得後に、どのような技術や知識を身につけるかは獣医師と同じで、実践や経験が必要です。国家資格により、採血などが認められるようになり、今まで行ってこなかった技術が必要とされます。また、新卒の愛玩動物看護師にとっては、獣医師が診療や手術をするのと同じように、採血などは自分たちができるものとして考えています。
愛玩動物看護師が実施できることに関しては、まだ不明確な部分もありますが、動物病院として今後の方向性や求めるスキルなどを明確にする機会、また技術の習得に対してどうしていくのかを、伝えていくことはとても重要なことです。
新入社員と同じように、新しい国家資格がどうなるのか、期待と共に不安を感じているのです。会社としてしっかりと、国家資格を活かしていけるというメッセージを伝えることが、大切です。
まとめ
Conclusion
新入社員の方に対しては、学生マインドを捨てて、早く社会人マインドになってほしいと考えておられるのではないかと思います。
キャリア支援をしていて感じることは、この学生マインドと社会人マインドの違いすら、同じ価値観ではないということです。
ただ、動物の命を扱う動物病院においては、動物への愛情、動物の命を守るための知識や技術、責任感、動物病院が大事にしている価値観を早く理解して、行動してほしいと思われていると多います。
さまざまな研修が身に結びつくには、現場での相談できる環境が大きく左右します。忙しい時期にいろいろ教えたいこと、伝えたいことは山ほどあると思いますが、まずはスタッフ間のコミュニケーションを取れる環境を作ることから始めることをお勧めします。
価値観は違えど、自己実現や社会貢献に関しては、獣医師として、愛玩動物看護師として成長したいという思いは同じです。
そのような視点から、私自身が行う新人研修では、キャリアについての考え方、有資格者として必要な法令関係、会社員のメリットやコンプライアンスなどをお伝えし、自身が感え、意欲的に働くことに必要な情報をお伝えしています。
様々な形の新人研修があると思いますが、新人研修や愛玩動物看護師育成も動物病院の理念に基づき、またそこに集まるスタッフの個性を理解することで、新人研修の組み立て方・育成方法も変わると思います。