ハワイ州年次大会に参加してー動物病院における人材育成・採用の悩みは同じ
2023/11/15
先日アメリカのハワイ州で開催されたHawaii Veterinary Medical Associationに参加してきました。
ハワイ州獣医師会(HVMA)は、ハワイ州の獣医師を代表する団体です。1920年に設立され、現在は約2,000人の会員を擁しています。HVMAは、ハワイ州の獣医師の資質向上や、獣医療の発展に貢献することを目的としています。コロナ前には、獣医師・動物看護師の日本語レクチャーも多く開催され、日本からも多く参加される学会でした。今回、コロナ後、初めて日本語レクチャーが開催されました。
以前より、マネージメント系の講義が多かったのではないかな?と思ったりと、色々肌で感じたこともあるので、今回はHVMAに参加した感想と内容をシェアしたいと思います。
ハワイ州の年次大会とは?
HVMA Hawaii Veterinary Medical Associationとは?
ハワイ州獣医師会(HVMA)は、ハワイ州の獣医師の資質向上や、獣医療の発展に貢献することを目的としています。そのために、以下の活動を行っています。
・獣医師の教育・研修
・獣医療に関する情報提供
・獣医療に関する政策提言
・獣医療に関する啓発活動
HVMAでは、毎年年次大会を開催しています。年次大会では、獣医療に関する最新の研究成果や技術が発表されます。また、獣医師同士の交流や情報交換の場としても重要な役割を果たしています。
2023年のHVMA年次大会は、2023年11月10日から12日まで、ハワイ州ホノルルのヒルトン・ワイキキ・ビーチホテルで開催されました。大会では、Exhibit Hallもあり、企業がさまざまな展示を行う以外に、朝食やスナックも提供され、日本の学会とはまた違った雰囲気があります。コロナ前の日本からの参加を考えると、まだまだ多くはありませんが、学会に参加された獣医師の先生方は、質問するなど熱心に講義に参加されていました。
3日間の学会の中で、獣医師の講義は毎日18コマほど。その中では、1日を通して組織のマネージメントの講義やまた個人に視点をあてたマネージメントが開催されていました。今回私はマネージメントの講義を中心に参加したのですが、米国における動物病院でも人材の確保や離職の問題はかなり大きく、今回マネージメントの講義が多かったのもその様な背景から来ていると感じました。
HVMA2023 マネージメント講義
Management for Animal Hospital
アメリカでも日本と同様、人材確保の問題は同じ様に起きている様です。獣医師の不足が深刻化しているとも言われています。その主な原因は、獣医師の教育費の高騰、獣医師の労働環境の悪化などです。これらの課題を解決するために、アメリカの動物病院では、以下の取り組みが進められています。
・動物病院の経営効率化
動物病院の経営効率化を図ることで、コストの削減や利益率の向上を図ることができます。
・獣医師の労働環境の改善
獣医師の労働環境を改善することで、獣医師の離職率を低下させ、獣医師不足の解消につなげることができます。
アメリカ国内での動物病院のでこのようなマネージメントへの取り組みから、今回のHVMAでも組織視点と個人視点でのマネージメントの講義が開かれていました。
組織におけるマネジメント
PURPOSE AND PEOPLE AND PROCESSES EQUAL PROFITS: 3 P’s To Perfection
マネジメントとは、組織の目標を達成するために、人やモノ、お金などの資源を効率的に活用し、組織を運営・管理することです。マネジメントが重要である理由は、以下のとおりです。
・組織の目標を達成するために必要
マネジメントがなければ、組織のメンバーはそれぞれが自分の思うように行動し、組織の目標は達成されません。マネジメントによって、組織の目標を共有し、メンバーの行動を統制することで、組織の目標を達成することができます。
・組織の効率的な運営・管理のために必要
マネジメントによって、組織の資源を効率的に活用することができます。例えば、人材の配置や育成、業務の効率化などを通じて、組織のパフォーマンスを向上させることができます。
・組織の持続的な成長のために必要
マネジメントによって、組織の変化に対応し、持続的な成長を実現することができます。例えば、環境の変化や競争の激化に対応した戦略の策定や、組織の文化や風土の改革などを通じて、組織の持続的な成長を促進することができます。
マネジメントは、組織の成功に欠かせない重要な要素です。マネジメントを効果的に行うことで、組織の目標を達成し、組織の効率的な運営・管理、組織の持続的な成長を実現することができます。今回のレクチャーでは、
PURPOSE AND PEOPLE AND PROCESSES EQUAL PROFITS: 3 P’s To Perfectionと題して、3つのP:目的、過程、利益という視点で講義がありました。これらを達成するためには、採用の段階がとても大切ということで、もし組織の文化や対人関係に合わない人がいたら、早めに辞めてもらうことを推奨されていました。アメリカは日本と違い、解雇できる国だからと聞いていましたが、解雇すると当然訴訟になるのもアメリカということで、雇用している獣医師より弁護士の数の方が多いというリアルなお話もされていました。
個人のマネジメント
Lead to Thrive The Art & Science of Leading Thriving Veterinary Teams
こちらの講義では、個人の捉え方や考え方を心理学の視点から個人がWell-beingを実現するためにはどのようにすべきかというお話でした。ポジティブ心理学を用いた講義でしたが、ポジティブ心理学とは、人間の幸せや繁栄に焦点を当てた心理学の分野です。ネガティブな感情や問題を解決することよりも、人々が生き生きと充実した人生を送るための方法を研究しています。ポジティブ心理学は、1998年に米国の心理学者マーティン・セリグマンによって提唱されました。セリグマンは、従来の心理学は主にネガティブな感情や問題に焦点を当てており、人間の可能性を十分に引き出しているとは限らないと考えていました。そこで、人間の強みや長所を研究し、それらを活かしてより良い人生を送るための方法を探求するポジティブ心理学を提唱しました。
ポジティブ心理学は、以下の5つの柱で構成されています。
- 幸福(well-being):ポジティブ心理学の中心的な概念です。幸福とは、単に楽しいことや嬉しいことだけを経験することではなく、人生全体に満足し、充実感を感じることです。
- 強み(strengths):強みを活かして人生をより充実させる
- 希望(hope):希望を持ち続けることが、困難な状況を乗り越える力になる
- 感謝(gratitude):感謝の気持ちを持つことが、幸せや幸福感を高める効果がある
- 優しさ(kindness):優しさを示すことが、自分自身や周りの人を幸せにする効果がある
ポジティブ心理学は、近年注目されている心理学の分野です。その研究成果は、教育、医療、ビジネス、スポーツなどさまざまな分野で応用されています。動物病院で働くスタッフにとっても、組織にとっても、個人個人が強みであるとか、希望などを主体的に考えることが、個人と組織のWIN-WINな関係につながるということを再認識しました。
まとめ
Conclusion
久しぶりのHVMAの参加でしたが、以前に比べるとマネジメントの講義が明らかに多い様子。状況的には、アメリカでも人材確保や離職の問題は日本と同じように起こっており、その視点から組織と個人に関するマネジメントが注目を浴びているように感じました。アメリカと日本では、法律や文化も違いますが、組織の利益のためには、人材が必要であり、従業員のWell-beingはとても重要という視点は同じであると、強く感じた学会参加になりました。
個人の目標設定や、肯定感、幸福感追求を自分自身もトライしようと思った矢先、たまたま見つけた本。ハワイでは以前から本屋さんにも立ち寄るのですが、今回は”my starter journal"という本に出会い、購入。32ドルかと思い購入したら、日本円にすると5000円ほどに。。。さすが円安と思い知った旅にはなりました。
それでも、学びは大きかったと感じているので、一歩一歩自分のできるところから取り組みたいと思います。