動物病院におけるキャリアー変化する時代のキャリアの考え方
2023/07/04
動物業界、特に小動物臨床においては愛玩動物看護師の国家資格化、それに伴う業務内容の変化、チーム医療を行う上での組織全体の変化が急速に起こっています。動物業界だけでなく、社会全体を見ると経済のグローバル化が進み、IT技術の進歩が目覚ましいことに加え、コロナやウクライナでの戦争など未来に何が起こるのか予想することは難しくなっています。
社会や企業の状況は、個人の意思でコントロールできるものではありません。
このコロナ禍での数年で、皆さんも実感されたのではないでしょうか?
キャリアに関しても、外的な要因で計画したとおりにいかないことも珍しくないと思います。そのような時代背景もあり、「計画的偶発性理論」というキャリアの考え方が注目されています。この考え方によると、個人のキャリアの8割は、偶然の出来事によって決定されるそうです。
そこで今回は、計画的偶発性理論の詳細と、注目されるに至った背景を解説したいと思います。
計画的偶発性理論
Planned Happenstance Theory
1999年にスタンフォード大学の心理学者のジョン・D・クランボルツ教授によって発表されたキャリア理論が、計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)です。ジョン・D・クランボルツは、教育心理学者であり、専門はキャリア論です。
その研究の中で、クランボルツ教授がビジネスパーソンとして成功した人のキャリアを調査した結果、そのターニングポイントの8割が、本人の予想しない偶然の出来事によるものだったそうです。この調査結果をきっかけに、クランボルツ教授は計画的偶発性理論を提唱しました。
私たちは、VUCAの時代に生きています。
VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉で、目まぐるしく変転する予測困難な状況を意味します。外部環境が不確実な時代で、目まぐるしく変転し、複雑で予測困難な時代を、VUCA時代といいます。現代のようなVUCAの時代においては、「変化に適応する力」が求められると言われています。
冒頭で述べた通り、未来に何が起こるのか予想することは難しくなっています。また、日本においては少子化も大きな問題とされており、今後DX化への変化は、動物業界でも起こってくるもの考えています。
そう考えると社会や企業の状況は、個人の意思でコントロールできるものではありません。キャリアに関しても、外的な要因で計画したとおりにいかないことも珍しくない中、当初立てた「何をしたいかという目的意識に固執すると、目の前に訪れた想定外のチャンスを見逃しかねない」とクランボルツ教授は指摘したのです。
これまでのキャリアプランの立て方は、将来の目標を決めて計画を立て、それに向かってキャリアを積み重ねていくというものがほとんどでした。しかし、変化の激しい時代にあって、将来の社会や会社の状況は個人の意思でコントロールできるものではなく、従来のキャリアプランの立て方は効果的とはいえなくなっています。 そこで、あえて明確なゴールを定めず、現在に焦点を置いてキャリアを考える計画的偶発性理論が注目されているのです。
これが、計画的偶発的理論が注目されている背景です。
明確なゴールを定めないというのは、何も目標を持たないということではありません。
現在に焦点を当てるということは、自分の価値感を理解し、自分のできること、やるべきこと、やりたいことを考えるということではないかと思います。
目標を幅広く捉える
目の前のチャンスに気づく
計画的偶発性理論では明確なゴールを定めないとはいえ、目標を立てること自体が否定されているわけではありません。1つの目標に固執して可能性を狭めるより、目の前の機会に気づけることがキャリアの成功につながるとされているのです。
例えば、「絶対に獣医師になる」と定めるより、何か動物を助ける仕事がしたいと考えたほうが機会は広がりやすいでしょう。
基本的には目標を立てることは、目指したい方向性を決めることになるため、今後のキャリアを考える上で、とても有効です。興味関心があることのほうが、勉強も捗り、情報は手に入りやすくなります。今現在、明確な目標がない人は、漠然でもいいので、どんなことをしたいのか、何を目指したいのか一度考えて、書き出すことをおすすめします。
5つの行動特性
Five Behavioral Traits
計画的偶発性理論では、成功するキャリアを築くために、偶発の出来事が起こるのを待つのではなく、みずから引き起こすべく行動することがポイントとされています。具体的には、以下の5つの行動特性を持つ人に機会が訪れやすいと考えられています。
<計画的偶発性を起こす行動特性>
好奇心(Curiosity):新しいことに興味を持ち続ける
持続性(Persistence):失敗してもあきらめずに努力する
楽観性(Optimism):何事もポジティブに考える
柔軟性(Flexibility):こだわりすぎずに柔軟な姿勢をとる
冒険心(Risk Taking):結果がわからなくても挑戦する
起きた出来事や周囲の変化を意識し、受け止める姿勢がキャリアの成功には大切です。
これは、新しい出来事や成功体験ばかりではなく、失敗体験においてもいえることで、出来事を前向きに捉えることが、新たな転機として、機会をつなげることができるのです。
働く上での資源(リソース)には、人脈というものがあります。出会いに関しても同様のことがいえます。たまたま連絡した友人、学会やセミナーでお知り会いになった人、SNSでつながった人など、誰から欲しい情報や良い知らせがもたらされるかはわかりません。偶然の出来事や出会いを必然へと変えるために最も大切なことは、あらゆる出来事に関心を持つこと、常にアンテナを伸ばしておくことです。
偶然の出来事は、起きた時点ではどのような結果をもたらすのかわかりません。未来が予想できないほど変化の激しい時代において、用心しすぎるよりも、挑戦してみるという意識が重要です。
まとめ
Conclusion
私たちが生きているVUCAの時代。
その変化を楽しむぐらいの余裕がないといけないのかなと、個人的に最近は感じています。「キャリアの8割が偶然の出来事による」と考える計画的偶発性理論。キャリアの理論を学ぶまでは知らなかったことですが、その行動特性を知ったことで、色々とチャレンジすることができたかなと思います。
いろいろな変化が訪れますが、広い視野を持ち、柔軟に対応できるように準備をして、偶然の出来事を機会にしてください。