働きやすい組織づくりⅥ-安心して働ける動物病院に!ハラスメント防止の取り組み
2026/01/16
このシリーズでは、動物病院で働く皆さんが安心して長く力を発揮できるための視点をお届けしています。
第1回は「ワークライフバランス」、第2回は「介護との両立」、第3回は「心理的安全性」、第4回は「後輩指導とPDCAサイクル」、第5回は「コンプライアンスとレジリエンス」を取り上げました。
最終回となる第6回は、「ハラスメント防止」です。
なぜハラスメント防止が重要なのか?
About
Harassment
ハラスメントは職場の信頼関係を壊し、働く人の心身を傷つけ、組織全体の力を奪ってしまいます。
動物病院のようにチームワークが不可欠な職場にとって、ハラスメント防止は働きやすさの土台そのものです。
主なハラスメントの種類
- パワーハラスメント(パワハラ)
- 指導の名を借りた叱責や人格否定
- 過剰な業務量を一人に押し付ける
- 無視や仲間外れにする
2. セクシャルハラスメント(セクハラ)
- 性的な冗談やからかい
- 不必要な身体的接触
- プライベートへの過干渉
3. 育児・介護ハラスメント
- 育児休暇や介護休暇を取ろうとすると嫌味を言う
- 「周囲に迷惑」と制度利用を妨げる
- 短時間勤務の人を軽視する
これらはすべて法的にも禁止されており、組織の信頼を損なう重大な行為です。
ここではハラスメントの一部を抜粋しておりますので、詳しくは厚生労働省のサイトをご覧ください。
ハラスメントのない職場がもたらすもの
Workplace without harassment
ハラスメントのない職場は、単に「問題が起きにくい職場」ではありません。
それは、人材が定着し、組織が安定して成長していくための基盤です。
まず、ハラスメントがない環境では、スタッフが安心して意見や違和感を伝えることができます。これは人間関係の円滑さだけでなく、医療現場としての安全性にも直結します。小さなミスや不安が早期に共有されることで、大きな事故やクレームを未然に防ぐことができるからです。
また、ハラスメントのない職場は、離職リスクを大きく下げます。
退職理由として表に出にくいものの、実際には「人間関係」「言動によるストレス」が背景にあるケースは少なくありません。経験を積んだスタッフが安心して働き続けられることは、採用コストの削減だけでなく、診療の質や病院運営の安定にもつながります。
さらに、職場の雰囲気は飼い主様にも確実に伝わります。
スタッフ同士が萎縮していたり、不満を抱えていたりする職場では、接遇や説明の質にも影響が出やすくなります。一方、互いを尊重する関係性の中で働くスタッフの姿は、「信頼できる病院」という評価につながります。
ハラスメント防止は、単なるコンプライアンス対応ではありません。
人材・安全・信頼という、病院経営の根幹を守るための重要な取り組みなのです。
組織やリーダーが整えること
What organizations and leaders need to do
ハラスメント防止というと、「問題が起きたら対応するもの」と捉えられがちですが、本当に大切なのは起きにくい環境をつくることです。そのために組織(院長・経営者)が最初に取り組むべきことは、決して難しいものではありません。
- 「ハラスメントを許さない」という姿勢を言葉にする
まず必要なのは、院長・経営者自身が「この病院では、ハラスメントを許さない」という姿勢を明確に言葉で示すことです。
就業規則に書いてあるだけでは、スタッフには伝わりません。ミーティングや面談、「安心して働ける職場を大切にしたい」「困ったことがあれば相談してほしい」と繰り返し伝えることが、職場の空気をつくります。また、研修などを実施し、スタッフの共通認識とすることも、とても大切です。研修を実施することでも、「ハラスメントを許さない」というメッセージになります。
- 相談できる“ルート”を見える形にする
次に重要なのは、相談先を明確にすることです。
「何かあったら言ってね」だけでは、実際には相談されません。誰に相談すればいいのか、院長以外に相談できる人はいるのか、匿名での相談は可能か。これらをあらかじめ決め、スタッフが「迷わず動ける状態」をつくることが、問題の早期発見につながります。
- 日常のコミュニケーションを整える
ハラスメントは、特別な出来事から突然生まれるわけではありません。多くの場合、日常の小さなすれ違いや不満の積み重ねが背景にあります。定期的な1on1や面談を行う、忙しくても、ねぎらいや感謝を言葉にする、指導の際は「人格」ではなく「行動」に焦点を当てる。こうした日常の関わり方が、ハラスメントの芽を早い段階で摘み取ります。
ハラスメント防止は、制度だけでなく「職場の文化」として根付かせることが必要です。
まとめ-共通認識と共通言語が、働きやすい組織をつくる
Summary
全6回にわたり、「働きやすい組織づくりのヒント」として、ワークライフバランス、介護との両立、心理的安全性、後輩指導、コンプライアンスとレジリエンス、そしてハラスメント防止についてお伝えしてきました。
これらのテーマに共通しているのは、制度や仕組みそのものよりも、「どう理解され、どう使われ、どう日常に落とし込まれているか」が重要だという点です。
どれほど立派な制度があっても、「それは特別な人のもの」「使うと周囲に迷惑がかかる」「言い出しにくい」という認識が院内に広がっていれば、制度は機能しません。
そこで大切になるのが、院内での共通認識と共通言語です。
たとえば、「ワークライフバランスとは何か」「心理的安全性とはどういう状態か」「指導とは叱ることではなく、育てること」「ハラスメントに該当する言動とは何か」。こうしたことを、全員が同じ言葉・同じ意味で理解しているかどうか。これが、働きやすい組織づくりの分かれ道になります。
共通言語がある職場では、「それは心理的安全性の観点ではどうだろう?」「今の指導、PDCAで振り返ってみよう」「それ、ハラスメントと受け取られる可能性があるよ」といった建設的な対話が生まれます。
これは誰かを責めるための言葉ではなく、組織をより良くするための共通のものさしです。
動物病院は、忙しく、専門性が高く、人と人との距離が近い職場です。
だからこそ、個人の善意や我慢に頼るのではなく、共通認識と共通言語という「土台」が不可欠です。
働きやすい組織は、突然できあがるものではありません。
日々の対話、振り返り、学びの積み重ねによって、少しずつ育っていくものです。
このシリーズが、皆さんの病院で「同じ方向を向いて話すための言葉」「考えを共有するためのきっかけ」となれば、これほど嬉しいことはありません。


