仕事をしていると、「あなたのキャリアは何ですか?」など聞かれたりすることも多いと思います。
「キャリア」…今後の社会を生きるビジネスパーソンにとっては、欠かせない言葉になりつつありますが、そもそも「キャリア」とはどういった意味なのでしょうか?
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What is career?
キャリアというと、というとどんなイメージが湧くでしょうか?
キャリアという言葉は、外来語ではあっても日本社会の中でかなり以前から用いられており、あえてその意味を問い直す必要性を感じていない人も少ないくないでしょう。
一般的に日本においては、下記のようなイメージが強いのではないでしょうか?
- 経歴
- 専門技能を持って職に就いている者 → プロフェッショナル
- キャリア (国家公務員) – 日本における国家公務員試験の総合職試験、上級甲種試験又はI種試験(旧外務I種を含む)等に合格し、幹部候補生として中央省庁に採用された国家公務員の俗称である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
しかし、現在の日本においては、このキャリアという言葉の意味も変化してきており、厚生労働省職業能力開発局「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書において、「キャリア」とは次のように定義されています。
「職業能力」との関連で考えると、「職業能力」は「キャリア」を積んだ結果として蓄積されたものであるのに対し、「キャリア」は職業経験を通して、「職業能力」を蓄積していく過程の概念であるとも言える。
出典:厚生労働省職業能力開発局「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書
言葉は生きているといわれるように、時代によって「キャリア」という言葉によって表現される現象は具体的に異なります。
流動的な現代の様な社会においては、変幻自在なキャリアを構築する必要があり、現代社会における「キャリア」は幅広い意味を持つようになってきているのです。
キャリアについての考え方
ボストン大学マネージメント・スクール組織行動学の教授であるダグラス・ホールは、心理的成功こそがキャリアの最終目標であると考えて、独自のキャリアに対する定義を提唱しています。
- キャリアとは、成功や失敗を意味するのではなく、早い遅いでもない
- キャリアは歩んでいる本人によって評価されてるものである
- 主観的なキャリアと客観的なキャリア双方を考慮する必要がある
- キャリアとはプロセスであり、仕事に関する経験の連続である
また、ホールは、現代のような産業社会における構造改革によって、個人と会社組織間の心理的契約が変化したことにも述べており、その中でキャリアへの考え方が、組織内キャリアから個人の仕事における心理的成功を目指す自己志向的なキャリアに変化したと述べています。
この考えを、プロティアン・キャリア(Protean Career)といい、キャリアとは、現代では組織によって形成されるものではなく、キャリアを営む本人が成功と思えるキャリアを自ら柔軟に構築してくことだとしています。
個人と会社の心理的契約
- 個人は組織に色々な期待を寄せているということと、組織もまた個人に色々な期待を寄せていることを暗に意味する
- これらの期待とは、給与だけでなく、個人と組織間の権利、特権、義務関係の全ての方を含んだものである
- 心理的契約は、組織から個人に対して権威を通じて施行され、個人から組織に対しては、上部への影響力を通じて施行される
伝統的キャリアとプロティアン・キャリアの対比
項目 | プロティアン・キャリア | 伝統的キャリア |
主体者 | 個人 | 組織 |
核となる価値観 | 自由・成長 | 昇進、権力 |
移動の程度 | 高い | 低い |
重要なパフォーマンス側面 | 心理的成功 | 地位、給与 |
重要な態度側面 | 仕事満足感 専門的コミットメント 自分を尊敬できるか |
組織コミットメント この組織から自分は尊敬されているか |
アイデンティティ側面 | 自分は何がしたいのか (=自己への気づき) |
私は何をすべきか (=組織における気づき) |
アダプタビリティ側面 | 仕事関連の柔軟性 現在のコンピテンシー (測度:市場価値) |
組織関連の柔軟性 (測度:組織で生き残れるかどうか) |
プロティアン・キャリアに欠かせないもの
上記の表のように、伝統的キャリアと比べるとプロティアン・キャリアは、個人の柔軟性が高く、その価値感を間違えれば独りよがりなキャリアになりかねません。
それ故、プロティアン・キャリアが言うところの心理的成功の意味を理解する必要があります。心理的成功とは、下記のことによって導かれます。
- 挑戦しがいのある目標
- 目標達成していくことに自分なりの意味を見出した時
- 目標が自己概念にとって重要
- 実際に目標を達成した時
今まで以上に自らの価値観や興味に気づいていること、過去の自分、現在の自分、未来の自分が連続しているという確信が必要になってくるのです。
そうでなければ、ただ変化に自分を合わせるだけになってしまい、本当の意味での心理的成功を体験するとこはできなくなるでしょう。
プロティアン・キャリアでの、心理的成功のためには①アイデンティティと②アダプタビリティが必須となります。
アイデンティティ
アイデンティティとは、一言で言えば自分の価値や自分の軸になることを言います。
「これが自分である」という感覚がアイデンティティですが、斉一性と連続性の二つの特徴を持ちます。
斉一性とは、自分が固有な存在である、という感覚であり、「私は他の誰とも違う自分自身であり、私は一人しかいない」という自信のことです。
また、連続性とは、過去の自分と今の自分を同じ自分として捉えられることであり、「今迄の私もずっと私であり 、今の私もそしてこれからの私もずっと私であり続ける」という確信のことを言います。
アダプタビリティ
アダプタビリティとは、「適応できる」「順応できる」という意味ですが、キャリアを構築するためには、変化を受け入れ、それに適応する能力が求められます。
まとめ
今後のキャリアを考える上では、心理的成功ということが一つの鍵になってきます。
また、この心理的成功をおさめるためには使命と自信が互いに影響しあい、それらが目的を達成するための努力を導くとされています。さらに、その経験によりアイデンティティに変化が起こり、それがまた使命と自信に影響をもたらすという循環になるといわれています。
流動的な現代において、個々のキャリアを形成していく上で、自分の価値に気づき、目的意識を持つことがとはとても大切なことです。