皆さんも一度は、「アイデンティティ」という言葉を耳にしたことがあると思います。
しかし、「正確な意味は?」と聞かれると、多くの人がその答えに迷うのではないでしょうか?
そこで今回は、「アイデンティティ」の意味を分かりやすく説明していきたいと思います。
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アイデンティティの語源・由来
「Identity」はラテン語の「idem(同じ)」という意味から来ている英単語です。
それがなぜ人の正体や身元という意味になったのかは議論があるものの、おおよそ理解できます。
人は歳を取り容姿も考え方も変わりますし、細胞もまったく違うものに入れ替わります。
そこで自分らしさを保つためには、「同じ」であることを証明する必要があります。
それゆえに、「同じ」という言葉が人の連続性を表す言葉として定着したのは不思議ではないですね。
アイデンティティの意味
「アイデンティティ」の意味を辞書で引くと、次のように述べられています。
アイデンティティー【identity】 の解説
1.自己が環境や時間の変化にかかわらず、連続する同一のものであること。主体性。自己同一性。
2.本人にまちがいないこと。また、身分証明。出典:goo辞書
上記のように、「アイデンティティ」は日本語では、「自己同一性」と訳されることが多いのですが、自己同一性とはどういうことでしょうか?
簡単に言うと、「自分とは何か」「自分らしさ」「自分の軸」という意味だと思うと、理解しやすいと思います。
例えば、「アイデンティティが確立されている」ということは、「自分自身とはいったい何なのか、どういう存在なのか」ということがわかっている状態を言います。
具体例を挙げてみましょう。
- 家族のなかでは、私は母親だ。
- 趣味でいうと、私は読書が好きな人間だ。
- 性格でいうと、私は社交的な人間だ。
- 世界の人種の中で、私は日本人だ。
このように、自分とは何かということを説明している内容そのものがあなたの「アイデンティティ」ということになります。
過去も未来も変わらないのがアイデンティティ
「アイデンティティ」の説明には、「自己が環境や時間の変化にかかわらず、連続する同一のものであること」ととあります。これは、昨日の自分も、今の自分も、変わらない自分であるという認識です。
つまり、時間や場所によって変化する自己像は、アイデンティティとは呼べません。
「アイデンティティ」は、過去でも未来でも、そしてどんな環境でも変わらない自己像でなければいけないのです。
アイデンティティのID
「Identity」は、「同一であること」「一致していること」などの意味のほか、「身元」「正体」という意味があります。
例えば、「ID」や「パスワード」を入力するときの「ID「ですね。
このIDは「Identity Document」の略称です。あなたの身元を判別するために割り振る文字列という意味になります。
アイデンティティとパーソナリティの意味の違い
アイデンティティと同様に使われる言葉には、「パーソナリティ personality」があります。
パーソナリティとは、「その人の人格・個性・性格」という意味を持つ言葉でアイデンティティと同じような意味があります。
しかし、アイデンティティは「自分が自分として同じものであること」を自分で認識することを指します。一方、パーソナリティは「自分が他人から見られたときの特性」を指します。
哲学・心理学におけるアイデンティティの意味とは
哲学・心理学におけるアイデンティティは特に理解が難しいのですが、主に人が青年期に初めて抱く「自分とは何か?」という問題意識として扱われています。
アメリカの精神分析医のエリクソンが初めて心理学において「アイデンティティ」という概念を取り入れ、青年期の発達課題として「アイデンティティの確立」VS「アイデンティティの拡散」という対概念を提唱しました。
エリクソンは「自分は何者であるか?」という疑問に対して答えを見つけられるかどうかが、人の青年期の発達課題であるということを説明しています。
アイデンティティの類語・言い換え
アイデンティティとは、「ある”モノ”がそれとして存在していること」自体を含む広い概念です。
そのため、類語としては様々なものがあります。
- 同一性
- 独自性
- 身元
- 一致(する)
- 自己認識
- 個性
- 人格
- 特徴
アイデンティティ=帰属性
また、アイデンティティには、「自分がある集団に属している」ということへの認識「帰属意識」という意味もあります。
「帰属意識」というのは、自分が会社や組織、民損久那土、様々な集団に属しているという意識です。
「アイデンティティ」は、他者や社会との関係の中で作られていくというものです。
私たちは日々、学校や会社などの組織の中で生活を営み、組織の中にいることによって「自分はこういう人間だ」という意識を持てるわけです。
このことからも、「アイデンティティ」は、自分一人で確立することはできないのがお分かりいただけると思います。
アイデンティティクライシス
「アイデンティティクライシス」は、自己の存在意識や社会的な役割が失われた状態のことを言います。
「クライシス crisis」は、「危機」という意味になり「アイデンティティの危機」とも呼ばれます。
つまり、自分らしさがわからなくなってしまった状態のことです。
- 会社など新しい環境になじめない時
- 自分の働き方に悩んでいると時
- 自分の行き方そのものを見つめなおす時
- 海外に行き、異文化に接した時
このように、自分の存在意義について悩んでしまった時に「アイデンティティクライシス」が使われます。
まとめ
「アイデンティティ」の概念を完全に理解するのは、もともと日本にない概念なので難しい部分があります。
根本的には、「アイデンティティ」=「自分らしさ」というように理解しましょう。
また、「アイデンティティ」は自分一人で確立するものではなく、他者による認証を得て初めて確立されるものであることも覚えておきましょう。