人事管理の基本にもある人材開発(教育訓練・能力開発)は、社員の組織人としての能力、経営戦略に沿った能力、キャリアに対応した能力を育成することです。
また、能力の育成における教育制度には、種々の方法があり、各教育制度のメリットデメリットを理解し、能力開発に役立てましょう。
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基本的に求められる能力
経済産業省が2006年から提唱してるのは、社会人として職場や地域社会で仕事をしてく為の社会人基礎力です。社会人基礎力は、「前に踏み出す力:action」「考え抜く力:thinking」「チームで働く力:team work」の3つの能力から構成されます。
その点を踏まえて、企業内で求められる養成する能力について記載します。
獣医師や動物看護師といっても、動物病院という組織に入った以上、組織人として求められる能力になります。
スタッフの育成には、長期的な観点や、継続的な訓練体系が必要になります。
組織人としての4つの能力
- 課題設定能力:企業や部門の方針を理解し、自分が行うべき課題を設定できる
- 職務遂行能力:その目的を達成できる
- 対人能力:他の人と協力して目的を達成できる
- 問題解決能力:目的を達成する際に起こる問題を解決できる
キャリアに沿った能力
- 変化に対応できる柔軟な能力
- 高度な業務を継続してこなしていける能力
経営戦略に沿った能力
- 高付加価値型経営に対応する創造的能力と専門的能力
教育訓練制度について
企業側が作り上げる教育訓練の諸制度の基本構成は以下の4つの観点から整理されます。
- 対象者:階層別研修、専門別研修、課題別研修など
- 内容:知識の研修、技能の研修、態度の研修、課題設定・問題解決の研修など
- 方法:OJT/OFF-JT/自己啓発など
- 実施主体:会社の部門、社員など
OJT(職場内教育)
上司や先輩の指導の下に、職場で働きながら行われる訓練方法です。
実態としては、職場の上司や先輩が後輩に具体的な仕事に取り組むだけのOJTが多いのですが、あくまでも仕事に必要な知識(常識・専門)・技能・態度などを意図的・計画的・継続的に指導しないと効果的とは言えません。
メリット
- 仕事通じての訓練なので、時間的にもコスト的にも効率的
- 文書などで客観的に表現できない技能を伝達できる
- 実践的な知識や技能を習得でき、意欲が高まる
- 能力、適性や仕事の必要に応じた個別的な教育ができる
デメリット
- 上司や教える人間の能力や熱心さにより効果が左右される
- 業務が忙しくなると教育する余裕がなくなる
OJTの進め方
手順 | 要諦 |
①部下・後輩のアセスメント | A:業務上必要とされる能力 B:個人特性 |
②育成目標↠訓練目標の設定 | ①のABを分析し、具体的にリスト化する |
③訓練計画の作成 | ②達成のための手段・スケジュール |
④結果の評価 | 次の目標設定に活かす |
効果的に実施するための観点
- 現状までよりも、一歩「難しい・多様性がある・権限の大きい」仕事与える
- 日常業務遂行中に気づいたことは、都度助言する
- 意図的・計画的・継続的であること
- 具体的な目標他姓の手段とする
OFF-JT(職場外教育)
仕事の現場を離れた場で行われる各種研修の総称をOFF-JTといいます。
メリット
- 特定の階層・職種・部門に共通して必要となる知識・技能を、大勢のスタッフに同一に均一に教育できる
- 社内外の専門家から日常のOJTのレベルでは習得できない知識や社外の情報を得られる
- 部門を超えてのスタッフが交流することで、情報や経験の共有の場となる
デメリット
- 費用や時間面での負担が大きい
OFF-JTのあり方
分野 | 主な対象 | 特徴 | 例 |
階層別 | 経営者から新入社員まで。 部門や職域を超えて階層横断で行われる |
該当する階層に属する社員に共通して求められる知識・技能の訓練 | 新入社員、管理者研修、役員研修など |
専門別 | 組織を縦割りし、研修開発などの部門ごと | 部門や職能に必要な専門的能力の教育 | 情報システム研修、技術取得研修など |
課題別 | 部門、職種を超えて共通の経営課題を持つもの | 企業の重要な特定の課題解決に向けた知識・技能の教育 | 人事評価者、考課者訓練、リーダー研修など |
自己啓発
社員自らが「どのような職業能力を開発したいか」という目標を持ち、それを達成してく為の長期的且つ自発的な教育訓練方法です。
企業の行う自己啓発のスタイルは、「自由形:社員の裁量に任せる」「選択型:会社がメニューや内容を提示する」「応募型:特定のテーマについて参加者を募る」などがあります。
支援としては、情報・場所・機材の提供や金銭的援助、時間的便宜の供与などがあげられます。
まとめ
教育訓練方法として、OJT、OFF-JT、自己啓発の3つををご紹介しましたが、いづれが最も重要というわけではありません。
メリットデメリットを理解し、その都度必要な教育方法を提示することが最も重要です。3つが相互に補完しあい、相互作用の結果、高い教育効果が生じることになります。
しかし、自己啓発と他2つの決定的な違いは、「自分で決める」ということであり、その点においては、自己啓発が他の2つの方法より高いモチベーションを持って取り組む結果になります。
経営環境の変化が激しい現在においては、自己啓発の必要性が最も重要視されつつあります。